デュアルSH-2プロセッサ:プログラマーたちのジレンマ
1993年後半、ソニーのPlayStationが持つ圧倒的な3D浮動小数点演算能力の秘密ブリーフィングに衝撃を受けたセガは、2基目の日立製SH-2 RISC CPUを追加してサターンの仕様を急遽変更した。現代のOS抽象化やキャッシュコヒーレンスがない中でのマルチコアプログラミングは、誰も歩んだことのない未踏の領域だった。
欧米のサードパーティ製スタジオは苦戦を強いられた。両方のCPUが同時に共有バスにアクセスしようとすると、システムが停止してしまったのだ。多くの開発者は2基目のSH-2を遊休状態にするしかなく、その結果、ソニーのコンソールに遅れをとるマルチプラットフォームの移植作が生まれてしまった。
「サターンでの開発は、ボクシンググローブをはいたまま高級腕時計を組み立てようとするようなものだった。しかし、一度マスターすれば素晴らしいパフォーマンスを発揮したのだ。」
四角形か、それともポリゴンか
PlayStationが三角形プリミティブを標準としたのに対し、サターンのVDP1ラスタライザは4つの頂点を持つ四角形スプライトをマッピングした。3Dジオメトリの作成は四角形を変形させることを意味し、頂点が同一平面上でなくなるとテクスチャが歪む原因となった。
しかし、相棒であるVDP2バックグラウンドプロセッサはまさに魔法のようだった。メインCPUに負担をかけることなく、複数の回転・拡大縮小プレーンと無限の描画距離をネイティブでレンダリングし、『パンツァードラグーン』の息をのむような雄大な空を作り出したのだ。

2Dアーケードの金脈
欧米では商業的に苦戦したものの、サターンは日本では崇拝されるアーケードの聖地となった。公式の1MBおよび4MB RAM拡張カートリッジを活用することで、カプコンやSNKの格闘ゲームをフレーム落ち一切なしでアーケード完全移植できる唯一のハードだった。
『ナイツ』、トレジャーの『レイディアントシルバーガン』、そして伝説の4枚組RPG傑作『パンツァードラグーン ツヴァイ』……いや『パンツァードラグーン RPG』などの時を超えた名作たちが、サターンをアーティストのためのコンソールとしてその歴史に刻んだ。

